速水社長とマヤちゃんがとうとう…「ガラスの仮面」別冊花とゆめ2011年3月号感想

別冊 花とゆめ 2011年 03月号 [雑誌]

別冊 花とゆめ 2011年 03月号 [雑誌]

もう30年以上読み続けているこのマンガ、ネットで盛り上がっているのを知り、たぶん十数年ぶりに漫画雑誌「別冊花とゆめ」を買ってしまいました。
その3月号をご紹介します。


●前回までのだいたいのあらすじ
偶然豪華客船アストリア号のワンナイトクルーズに乗り合わせることになったマヤと真澄。
2人で楽しい時間を過ごすうち、紫織が画策した指輪事件などによるお互いのわだかまりも消えていき、昔のような屈託のないやりとりが。
夜になり、速水はマヤを、紫織が真澄と既成事実をつくるためにリザーブしてあった部屋へ案内する。
おれはその辺で寝るからとマヤを部屋に残し去る真澄。
豪華なダブルベッドを見たマヤはショックを受け、真澄が紫織のために用意した部屋でなんか眠れないと涙を流しながら真澄に部屋のカギを返しに行く。1人デッキで酒を飲んでいた真澄はうろたえ、あの部屋は紫織が勝手に予約したもの、君に会うまでは泊まらずにかえるつもりだったと必死の言い訳(笑)
そしてあげくはカギを夜の海に放り投げる。
結局ラウンジで眠った2人、次の日、目を覚ましたマヤは朝焼けの空のあまりの美しさに真澄を起こし、甲板へ連れ出す。
速水さんが間に合ってよかったと嬉しそうなマヤに戸惑う真澄。
もしかしてあの暴漢事件のあと、大怪我をして気を失っていた間に夢うつつで聞こえたマヤの愛のセリフ。
夢ではなく現実……?
あの日社長室に落ちていた血染めのハンカチを内ポケットから出して差し出すとそれを真っ赤になって受け取るマヤ。
やっぱりこのハンカチはマヤのものだった!
それでもどうしても確信が持てないネガティブ真澄。あのとき耳にした言葉(阿古夜のセリフ)を直接自分の耳で確かめたい!
真澄はマヤに、ここで阿古夜を演じてみてくれと頼む。今、船上の阿古夜が始まった……!!


●3月号あらすじ
真澄への気持ちをこめて阿古夜のセリフを言うマヤに、「このセリフ、覚えがある。まさか(あれは夢ではなかったのでは)……?」と思うものの、いやいやまだまだ、この程度では確信が持てない超ネガティブ思考の真澄、念のためもう一回確認するべく演技をいったん中断させ、もいっかい暴漢事件のとき耳にしたセリフからやってくれと頼む。
「?」と思いながら繰り返すマヤ。
そこでようやく「あれは夢ではなかったのか」と確信する真澄。
「信じられない。マヤがおれを……このおれを……?」
しかしまだ語尾に「……?」つきの上、「おれを…」までで思考停止してます。「おれを……好きだったのか?」くらいまで踏み込んで思う勇気のない速水社長が哀れです。ネガティブ思考は骨の髄までしみこんでいるようです。


さて演技はクライマックス。手すりにかけてあった真澄の上着を抱きしめ、「おまえさまにふれているときはどんなにか幸せ……」と陶然とほおを寄せるマヤ。
口ぽかん状態でかたまってしまった真澄。顔を赤らめて(冒頭から赤らめっぱなしですが)ぼうっとしております。
(そのとき……おれはどうしようもないほど無防備な表情をしていたと思う。まるで自分が抱きしめられているような気がした……)
いきなり過去形でモノローグ。
おもむろにスッと真澄に近づいたマヤ、真澄の頬に「ピト」と(この擬態語もどうかと思うが)手を当て、「捨てて下され名前も過去も……阿古夜だけのものになってくだされ」「離れることなどできませぬ。永遠の命のある限り……」真澄をまっすぐに見つめるマヤ。二人のバックには今まさに上り来る朝日が……!!


真澄陥落。


次ページをめくると読者はぎょっとすること請け合い、丸々1ページを割いて、ゆらゆらと立ち上るオーラをバックに白目赤面という表情コラボレーションにて仁王立ちする真澄……のバックにさらに同じ表情の真澄のドアップ。
アップとロング、ダブルの白目真澄にかぶさる「ああ……もう……だめだ……」(「だめだ」がひときわ大きい)の文字(失礼ながら笑いを抑えきれませんでした。ちなみにこのページの真澄、デッサンもゆらゆらと狂いまくりです)
「だめだ」ってなにがだよ、と思ったら、隣ページにぎゅっと目を閉じた真澄の心の叫び「完敗だ……! これ以上自分の心をだませない」ですって。
(いままでオレが必死に保ってきた理性が、突き上げる感情に)「完敗だ」ってとこでしょうか。
サイヤ化した真澄は、ついに自分の感情のままにだっとマヤに駆け寄り、抱きしめた。
ビックリするマヤ。嬉しいと言うよりもビックリしてるマヤちゃんと必死な真澄の温度差が笑えます。
「もういい、もうやらなくていいから……わかったから」
残念、サイヤ化中途半端。
「わかったから……」だけじゃわからないでしょうが。好き、愛しているなどの決定的な一言をどうしても言えない真澄。読んでいる方としてはこのへんでだんだん腹が立ってきます。
案の定、人一倍鈍いマヤには、何を「わかったから」なのかはっきり理解できていない様子。戸惑っていますが、愛する真澄から抱きしめられたのですから、当然イヤなわけありません。


そこへぞろぞろと朝日を見に上がってくる乗客たち。
「わっラブシーン」「ぎょっ」
「速水さん噂になってます」と身を引こうとするマヤ。速水よりよっぽどまわりの状況が見えているみたいです。
ところがいつもの速水さんなら「はっ」(白目)でマヤを離すだろうに、「ギュ」とさらに抱きしめる。
びっくり(私が)。どうやら……速水社長、ネガティブぐるぐるループから一歩抜け出せそうかも!
「かまわん……君は嫌か、オレと噂になるのは」
「いいえ……いいえ速水さん」
「ではもうすこしこのままでいさせてくれ、頼む」
「はい……」
速水の言葉に、マヤも真澄を抱きしめかえす。
抱き合う2人の姿に、「行きましょう、邪魔しちゃ悪いわ」空気を読んで去っていく乗客たち。(KY桜小路くんとは大違い。)
甲板2人占め状態は続く。


やがて我に返った速水。驚かせてすまなかったなどと言いながら、マヤから離れる。
海の方を向きながら、マヤを、今後チビちゃんではなく名前で呼んでもいいかと。マヤと目を合わせられず耳までまっかにしてあさってのほうを向いております。
この時点で、真澄の心は(やや弱気ながら)ようやく「2人は同じ気持ちなのかもしれない」という確信?が芽生えつつあったのでしょうね。
だから、(恋人同士のように)名前で呼んでいいかってきいたんだと思います。どきーんとするマヤ。
(違う呼び方……速水さんそれって…)
「マヤ……」と見たこともないような腑抜けな甘い顔でマヤを見つめて初呼び。(いままでもどさくさにまぎれて何度も呼んでたじゃんねぇというツッコミはなしで)
マヤ真っ赤になって顔から湯気状態。「……はい」


ハラが決まったのか、ややリラックスして語り始める真澄。
あの伊豆半島のどこかに自分の隠れ家がある。白い砂浜、夜は満天の星空……☆
そこへ行くと本当の自分を取り戻せる気がすると。


そしてそして、たぶん心臓ばくばく度200%の真澄が言い放った一言。
「今度あそびにくるか?」
「え?速水さん今なんて……?」と無邪気に見上げたマヤがみたものは、顔真っ赤にして口を押さえてる社長の横顔でした。
(ここの真澄のアップのコマ、正視できません。キモすぎて……いえいえ恥ずかしすぎて)
自分でも自分の言ったことが信じられないのかぽろっと出てしまったのか。
我に返ったように「嫌なら断っても……」といつものくせが顔を出しかけますが、そこに「いいんですか?」と無邪気に答えるマヤの声がかぶさる。「速水さんのそんな大事な場所にあたしなんかが行っていいんですか?」と素直に嬉しそう。
真澄は自分の耳まで信じられないのか、自分で誘ったくせに動揺して思わず聞き返します。
「いいのか? おれひとりだぞ」
いつもなら「もちろん大都芸能の社員を招いて年に一度開いている慰労パーティーのことだからな。俺1人ってわけじゃないぞ。何か期待してたのなら残念だったなチビちゃん、まだ早いぞハハハ。」などと思いっきりごまかしそうな真澄なのに……。
(ここまでリアルにセリフまで想像できるとは、読者としても相当ネガティブ思考がすり込まれているもようです。)
まあそれだけ今の真澄は皮肉屋の仮面をかなぐりすてて素直になってるってことでしょう。
対するマヤの答えはなんと
「はい、あたしも1人で行きます速水さん」


ちょっとマッタァーーー。
30男の別荘に1人招待される意味分かってるんでしょうかマヤちゃん……いや、信じられないが、さすが平成マヤはわかってるみたいです。
だって、頬に一筋、決意の「汗」かいてますもの。
真澄「いいのか? 本当に」
確認しすぎです(笑)。あまりに長年思いを押さえてきたので、よっっっっぽどこの状況が信じられなかったんでしょうね。これが曲がりなりにも冷血仕事虫と言われた大企業の社長でしょうか。ちょっとかわいそうになってきました。
「はい、迷惑じゃなければ……」
(マヤ……!)(速水さん……!)
見つめ合う2人。勇気を出してよかったですねぇ、社長。


そのころ、町中をドドド……と埠頭へ向かう桜小路のバイクが。
オイ来るなよ……ドドドじゃねーよ……と読者の9割がツッコミをいれたことでしょう。
黒沼先生からマヤが紫織さんを追ってアストリア号にうっかり乗り込んでしまったと聞いたらしい。
「マヤちゃんらしいなまったく」「僕が迎えにいったらマヤちゃんビックリするかな……」だって。事情が分かってる読者は失笑するしかありません。
ああこれは現実世界にいたらウザイひとだろうなー。決して悪いやつではなくむしろいい人なんですが。
関係ないけど「相棒」の陣川警部補をちょっと思い出してしまいました。


船上では朝食も食べずに甲板に2人たたずみ海をみつめる真澄とマヤ
「このまま時間が止まればいい……」
って、このモノローグ梅の里やらで何回も聞いた覚えが。
大人ならそんなこと思ってないで、現実的にするべきことを考えてほしいものです。伊豆別荘の前に、真澄は婚約解消、マヤは桜小路に交際申し込みの断りを入れるという重大な責務が。

そしてザザ……ンンと波が打ち付ける港。
青ざめた紫織が立ち尽くしている。
「真澄様……」

つづく。


●あらためて感想

買って良かったです!!!

ついについに、速水真澄と北島マヤがお互い意地を張るのをやめて両思いらしきこと(まあ、前から両思いでしたが)になっているではありませんか。
ちょっと遅すぎた感もありますが。
あまりの展開の遅さとじれったさと休載の多さに、一度読むのをやめていたのですが、こんなことになっていようとは。
甲板で抱き合う2人の姿を本物の印刷物として見たときは目頭が熱くなりましたよ……。

真澄はwikiの人物紹介で「能力・容姿共にすぐれた辣腕経営者」などと紹介されているのですが、どこがだよ!とつっこみたくなるようなこの10年くらい(作品世界では2年くらい?)のヘタレっぷりからようやく奮起して、とうとうマヤと思いを通じ合わせることができたのです。

社長には婚約解消に向かってつきすすんでほしいものです! どうか遅すぎませんように…。
心から応援しています。


★余談
「捨てて下され名前も過去も」という阿古夜のセリフ、なんだか節がついてそうないいまわしですね。 さては南京玉すだれ♪……みたいな。